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年号と尺貫法

 どうも史間です。
 お久しぶりすぎて、恥ずかしさのあまり地中に埋まってしまいたい衝動をぐっとこらえて書きます(笑)。

 ちょっと前に山本一力さんの『いすゞ鳴る』(文藝春秋)を読みました。
 以前、例会に出席した時に『あかね空』について話したのを思い出します。「親分さん、かっこいいですよね!」で盛り上がれたのが嬉しくて、文学市場に入ってよかったなぁと思いました!
 『いすゞ鳴る』も熱くて爽やかなかっこいい男たちがたくさん登場して、とても私好みな作品でした。が、今回は読書感想をすっとばします。
  何が言いたいかといいますと、年号と尺貫法についてです。
 実は『いすゞ鳴る』を読んでいて、すごく気になったことがありました。冒頭部分をいくつか抜き書きしてみます。
「種崎村と二百八十間(約五百九メートル)隔てた対岸は……」
「五尺七寸(約百七十三センチ)の上背がある又蔵は、村で一番の大男だ。……」
「背丈が四寸(約十二センチ)も低い清巌は、又蔵を見上げる形になった。……」
 おわかりでしょうか。
 そう、距離や寸法を表す時に、必ず尺貫法(メートル法)で表記してあったんです。
 同じように、『いすゞ鳴る』では、和暦(西暦)も統一表記されています。
 
 たしかに。
 二百八十間だの五尺だの言われても、メートル法で育った世代にはわからないですよねぇ。私もそうなんですが。
 
 ただ、個人的には、登場人物たちの容姿を重ねて説明するシーンでは特に、読んでいてちょっとつまずくなぁと思った次第です。これは邪推ですが、作者ではなく編集者の意見でこういう表記になったのではと思いました(あくまで想像ですが)。おそらく、以前はあまりなかったような気がします。
 
 年号と尺貫法については、毎回悩みます。
 西暦やメートル法を文章内に挟み込むほうが、まちがいなく親切です。
 でも当時の日本には存在していないし(まあそれはいいとして)、文章のリズムが狂っちゃうような気がします(気がするだけかもしれませんが)。あまり書いたことはありませんが、一人称で時代物とかなると、ますます変な感じになっちゃいそうです。
 そのうち、石高や俸禄、当時の通貨制度、地理名称なんかについても、教科書のようにきちんと説明しなくちゃ読んでもらえなくなりそうで、おおう…となってしまうわけです。ただでさえ、若い世代の方にはとっつきにくい印象ですものね、歴史時代物。もっと読んでいただきたいのですが。
 
 ちなみに、『扇の蟻』ではあえて不親切を貫いております。ページ数をきゅっとして原稿料を安く上げようとしているのですが(おい)、迷っているから放置しているという理由もあります。年号については、西暦を知らなくても「こういう時代だったんだ」ってわかってもらえればいいかなと、他の部分で補っているつもりなのですが。
 
 いずれ全話を1冊にまとめたいなと思っているのですが、その際、本文中に西暦やメートル法を書き込むか、巻末に年表と尺貫法解説を入れたほうがいいのか、かなり真剣に悩んでいます。皆さんは、どっちのほうがより歴史時代物に触れてみようかなって思えるのでしょうか。
 
 久しぶりのくせに、個人的なお悩みコーナーと化してしまってすみません。
 
 
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単位

今は地中ですか?←軽い精神攻撃

なかなか興味深い話題でした。

私も「そこまで念入りに表記しなくても」と思う派です。言葉のリズムを大事にしてほしいし、雰囲気崩れそうだし、しつこいと感じそうだし。
まあ、当然出版社の方々はプロなので、そういうのはわかった上であえてそうしているんでしょうが。アンケート結果だとかとった上での根拠ある決断なんでしょうね。


ぱっと世間を見たときに、単位ってそんなにみんな気にしてないですよね?

たとえばテレビやなんかのサイズはインチですけど、1インチがどれぐらいかってのは知らない人がけっこう多い。まあ、これは尺と違って体感としてわかっているでしょうが。

あと、IT関係だとピクセルとかバイトが単位として使われますけど、これらの単位が示すものをどれだけの人が知っているだろう? さほどみんな気にせずいるよな〜って。

そう考えると単位なんてけっこう大雑把な扱いでもいいんじゃない? なんて思ったり。

話脱線しまくったかも!
失礼します!!
  • 菊枝
  • 2012/10/21(Sun)00:28:10
  • 編集

復活。

>てんねさん

地中に埋まってみましたが、冬眠にはまだ早いと思い、出直すことにしました(笑)。

「歩けば夕方には着く」とか「○○より頭一つぶん低い背丈の○○は」とかいう表現に切り替えれば、ある程度は避けられるとは思うのですが。でもやっぱり年号や単位の表記って、必要になってくるものですし。

年号や単位って歴史時代物が倦厭される要因の一つじゃないかなぁとか思っているので、どうにかしたいのですが。
「小説は教科書じゃない。わからないなら調べろ」って本音なんですけど(笑)、「わからないから読まない」って言われちゃったらそれまでなんですよね~。てんねさんみたいに、気にならないから読むって方もいらっしゃるとは思うのですが。

これからは、どんどんこういった問題(?)は増えてくると思うんですよね。でも、個人的には、娯楽を通して歴史に興味をもってもらいたいと考えています。私が歴史物を書く理由の一つが、私より若い世代の方々に楽しんでもらいたいっていうものなので、なおさらです。もっと能動的に学ぼうって意識してもらうには、どうすればいいのかなぁ……(以下ループ)。

てんねさんのご意見を参考に、考えてみます!

気にしていない単位って多いですよね。
私は仕事柄、pixelやdpiなんかは意識しなくちゃやっていけないのですが(笑)。

おはようございます

地中よりの復活おはようございます(笑)

私の意見なんて参考にならないんでもう無視しまくってください!

単位や年号ってそんなに時代小説と読者が距離を置く原因になっているのかな? ああ、でも、確かにそういう一つ一つの小さな積み重ねではあるのかもしれない。なんかそういうのがたくさんあると「難しそう」「読むのに知識が必要そう」というイメージを持たれるのかも。

時代が流れるほどに過去は遠ざかっていくわけですよね、当たり前な話。
現代との差が時代物の魅力なのでしょうが、現代との差が時代物を遠ざける理由ともなるわけで、魅力と問題が表裏一体なのだなと。

難しい!
  • 菊枝
  • 2012/10/22(Mon)22:07:04
  • 編集

背景文字

私も山本一力ファンです。単位は臨場感をもった背景文字としてしかとらえてませ
てアバウトにとらえ、読み流しています。()の多い作品は、ky
興が削がれ作品世界に没頭できないマイナス要素の一つに
思えます。彼の作品は改行が多く、幕間を楽しめる要素もあると思う。さもコメントデビューで枠におさまっているのか
とまどっています。 不慣れでゴメンナサイ。
した。。
  • 北上
  • 2012/10/23(Tue)19:43:49
  • 編集

目からうろこ

>北上さん

ご意見ありがとうございます!
臨場感をもった背景文字というとらえ方が新鮮でした。なるほどと思いました。雰囲気だけ感じ取ってくれたら嬉しいですね。それで十分だと思います。
それから、山本さん好き同士、ほんとに嬉しいです! 読みやすい文体だし、登場人物たちは個性的でかっこいいし、楽しい時代物だと思います。「いすゞ鳴る」は大震災のこともあって読みはじめたのですが、いろいろ考えられさせられました。あと、天九郎がかわいくて好きです♪

>てんねさん

いえいえ、参考になりますよ!
「わからなけりゃ読まなきゃいい」ではない、他の形が模索できればなぁと思っています。


お2人のご意見を読ませていただくと、やはり巻末に解説とかのほうがよさそう、かな?
  • 史間
  • 2012/10/24(Wed)07:43:35
  • 編集

久しぶりに

尺貫法と年号、私も()付き表記は分かりやすいけど、読んでいて
邪魔な気がします。
同じ一寸でも、かね尺とくじら尺とでは、ちょっと長さが違う、
なかなかややこしいですが、昔から使い分けてきたことですから、
せめて時代小説の中では大切にしてほしい派です。

なるほどー

>kazukoさん

kazukoさんも( )は邪魔とお感じになられるのですね。時代物を読み慣れていらっしゃる方などは、そう思われる方が多いでしょうね~。歴史時代物で大切にしたいことは残し、かつ歴史時代物が苦手だという方にも親しんでもらいたいんです、私。我がままかもしれませんが(笑)。

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