忍者ブログ

あの夕日を見たか?

 どうも史間です。
 今回は情景描写と心理描写の話をしようと思います。



 皆さんは「夕日」という言葉から、どのような情景を想像しますか?
 記憶の中の故郷の空、好きな映画のワンシーン、昨日見た景色、思い起こすシーンは人それぞれだと思います。皆経験が違うのですから、同じ夕日ではないはず。高村光太郎の『智恵子抄』にも、「阿多多羅山の山の上に 毎日出てゐる青い空が 千恵子のほんとの空だといふ。」とあります。空とか海とか、そういう単純な言葉ほど、実はもっとも難しいんじゃないかなぁと思うわけです。

 夕日に限らず、小説の中で、風景描写は時に人物の心情を描き出す道具にもなります。物語のどこで、どういう風に使うか、効果を考えながら書きたいものです(なかなかできませんけど)。

 以前、ある方にインタビューをした際、こんなことを伺いました。
 高校の演劇部に所属していた時、演劇コンクールで、その方は出番の間に照明も担当していたそうです。
 夕焼けに染まっている場面でした。オレンジ色の照明を、斜めから当てるだけでよかったのですが、その方はうっかりカバーをつけたまま舞台を照らしてしまったそうです。
 本当なら大失敗なのですが、それが評価され、照明部門で賞をもらったというのです。それというのも、そのカバーが縦の影を舞台に描き出し、まるで格子窓から夕日が差し込んでいるように見えたのだとか。ちょうど別れを告げるというシーンで、寂しさをより引き立てたのです。照らした当人は、まったくそうは見えなかったらしいのですが(笑)。

 小説は、映像や舞台、絵画とは違い、一瞬でその場面の情報を伝えることができません。それができないからこそ、何を、どういう順番で描写するかが大事なんだなぁと考えます。そして、そのイメージの半分は、読み手に任せるしかありません。読み手それぞれが持っている風景のイメージを、どれだけ自分の思うものに近づけられるか。いつも悩んでしまいます。

 皆さんがこだわっている風景描写(夕日の他にも、雨とか風とか雲とか海とか、いろいろありそうです)などがあれば、ぜひ伺いたいなぁと思うのですが、いかがでしょうか。

 ちなみに私は、雨と雷をよく使います。使い過ぎなので、いい加減別の引き出しが欲しいです(笑)。精進します!

PR

この記事にコメントする

お名前
タイトル
メール
URL
コメント
絵文字
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
パスワード

活用にはほど遠く

>史間さん

こんにちは。私はまだイメージが貧弱です。
夕日というと、乗り物の窓から見える空の夕日とか、
とにかく一日の終わり・物語の終わりを告げるベタな情景しか
浮かばんという体たらく。
その他の風景も、もっと心象風景に使えるようになりたいものです。

ちなみに私は、情景の設定と展開で、心がけていることがあります。
設定には必然性を持たせる。
春と決めたら、ストーリーにも春ならではの展開を持たせる。
(秋でも描けるようなストーリーにしない)
展開は、同時進行で描く。
つまり情景ばかりを延々と描くのではなく、登場人物の描きこみや
ストーリーの進行と混ぜて描く。(=はさめる範囲ではさむ。)

「すごくリアルで臨場感のある文章なのですが、けっきょくこの
話は何が言いたいのですか???」
というところに陥るよりは、情景描写は貧弱でもよいかな、と。

とても興味深いです

>宮島さま
コメントありがとうございます!
春を舞台にと決めたら、春にしか書けないものをというのが、
とても興味深いです。
季節ネタ…ということでしょうか?
私の場合は、テーマを決めて、それを表現するために相応しい
季節を選ぶという作り方をします。
史実であれば季節は決まってしまいますが。

描写にしても会話文にしても、バランスは大事ですよね。
文章のテンポを考えながら、自分だけの空間のつくりかたを
模索したいものです。

マジックアワー

三国連太郎の不幸がらみから佐藤浩市がテレビに出ているのを
みて、三谷幸喜の映画「マジックアワー」を思い出しました。
日没までの数分間、空の色の変化がマジックに思えることからこの
映画タイトルが生まれたとか……。紫色に暮れなずむ映画のそ
のカットシーンは心理描写のあれこれがてんこもりされた状況
なのだなぁと今更のように酔いしれたことがおもいだされまし
た。
  • kitakami
  • 2013/04/18(Thu)20:38:10
  • 編集

観てみたくなりました!

>kitakamiさま

お返事遅れてすみません~!
マジックアワーまだ観てないんです。
お話を聞いて観てみようと思いました!

映像と文章って、当然のことですが表現方法がちがうので、
逆に「文章だったらこれをどう表現するだろう?」って
考えながら観るのが好きです♪

このblogについて

文学市場は1994年設立のジャンル不問文芸同人サークルです。毎年3回、同人誌「さくさく」を発行しています。
ブログ「さくさく」では、文学市場の同人が、例会の様子や文学について、などゆる〜い感じで紹介します♪
 
文学市場のサイトはこちら

管理人

ペンネーム:
菊枝てんね

東京在住です。

文学市場に入会してまだまだ日が浅いですが、先輩後輩の概念がない誰もが平等なサークルなので、出しゃばりつつ口滑らせつつ明るく楽しく活動しています!

文学市場の良さが伝わるような記事を心がけて更新していきます。

 
 
ペンネーム:
史間あかし

京都在住の同人です。合評会にはたまにしか参加できないため、主に雑記に現れます。「さくさく」では今のところ歴史・時代小説を書いていますが、青春物やファンタジー、童話なども書きます。

趣味はエレキギターと剣道とカメラ。文学と町歩きを絡めながら、のんびり雑記をめざします♪

 
 
ペンネーム:
大山日文

産みの子である作品が評価される合評会。毎回おののきつつ参加、というのは丸っきりの冗談で、褒められること批判されることありの大勉強会に感謝感謝です。小説を中心に、詩や戯曲を物する、自称「書生」?の若手?も更新します!

 
 
ペンネーム:
若夏

東京在住です。

月一の合評会では先輩方の才気に富む意見に刺激を受けながら、まだまだ執筆経験は浅いですが、もの書きを目指しています。

「さくさく」には短いエッセイを載せています。

踊りによる自己表現にも興味があり、将来、文章と踊りを融合させた作品を作れたらと小さな夢を抱いています。

最新コメント

[03/30 Mariowof]
[06/02 Trievept]
[05/20 とみ]
[01/05 菊枝]
[01/05 菊枝]

カレンダー

03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30

アーカイブ

バーコード

ブログ内検索

P R